静岡県立大学グローバル地域センター自然災害研究部門の楠城一嘉特任教授は、東京大学大学院情報学環?学際情報学府の酒井慎一教授と共同で、静岡県北部の南アルプスの現地調査と衛星データに基づく地殻活動の観測研究を開始しました。研究成果の速報を3月8日、9日に開催される「南アルプスユネスコエコパーク登録10周年記念シンポジウム「南アルプスの人々の暮らしと自然を次の世代に」」内の第2日目(同月9日)「南アルプス学会研究助成者報告会」にて発表します。
研究の背景
静岡県北部は3,000m級の山々が連なる南アルプスに含まれます。今も年間1-4mmの速度で押し上げられている国内最速レベルの隆起域であり、まさに生きている山々といえます。2014年ユネスコエコパークの登録以降、南アルプスがもたらしてきた数多くの恩恵が再認識され、持続的発展のための魅力ある取り組みがなされています。
一方、静岡県北部の南アルプスにおいて大地の動きを捉える研究が十分になされていない現状があります。例えば、地殻活動(地震、地滑り)や湧水の様子は十分には把握されていないのです。また、リニア中央新幹線の新しいトンネルが南アルプスの下に掘られた場合、大量の水が流れ出て大井川の水量が減り、その大量の地下水の流出で、静岡県の自然や生活環境が変化してしまう可能性について慎重な議論が続いていることは周知の事実です。
このような状況のもと、南アルプスとステークホルダー(地主、工事?環境保全関係者、里山住民、地元自治体など)がより良い形で共存し未来に繋げていくには、「南アルプスの大地で何が起きているか?」を知る研究が必要と考えられます。そこで、本研究グループは、南アルプスの現地調査や衛星データを活用して、地殻活動や湧水の様子を観測する体制を整備し、研究することを開始しました。
一方、静岡県北部の南アルプスにおいて大地の動きを捉える研究が十分になされていない現状があります。例えば、地殻活動(地震、地滑り)や湧水の様子は十分には把握されていないのです。また、リニア中央新幹線の新しいトンネルが南アルプスの下に掘られた場合、大量の水が流れ出て大井川の水量が減り、その大量の地下水の流出で、静岡県の自然や生活環境が変化してしまう可能性について慎重な議論が続いていることは周知の事実です。
このような状況のもと、南アルプスとステークホルダー(地主、工事?環境保全関係者、里山住民、地元自治体など)がより良い形で共存し未来に繋げていくには、「南アルプスの大地で何が起きているか?」を知る研究が必要と考えられます。そこで、本研究グループは、南アルプスの現地調査や衛星データを活用して、地殻活動や湧水の様子を観測する体制を整備し、研究することを開始しました。
研究のポイント
- 最速隆起速度の大地にかかる力は大きく、南アルプスでは日頃から地震が起きています。しかしながら、アクセスが難しいことから静岡県北部の南アルプスは地震観測の空白域です。またトンネルが掘られた場合、力のバランスが乱れ、地震の起き方が変わる可能性があるので、工事前から地震観測を開始しておく必要があります。本研究では、二軒小屋ロッヂ、椹島ロッヂ、千枚小屋に地震観測装置を設置し地震観測ができることを確認しました(図1)。
- 地滑り地形の多い地域ですが、現在どこで地滑りが起きているのか自明ではなく、またトンネル工事により地滑りの様相が変わる可能性もあると考えられます。本研究では、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」により観測された合成開口レーダ(SAR)データを用い、地滑りと考えられる箇所を特定できることが確認できました(図2)。
- 南アルプスの湧水は新しい研究対象で、その成分、起源、流路など未知と言えます。また、トンネル工事により地下水が流出したり、大地の力のバランスも乱れて亀裂ができたり閉じたりする結果、地下水の流路が変わり湧水の成分が変化する可能性もあります。本研究では、複数地点で湧水(環境水)を採取し成分分析を実施できる体制作りのための基礎観測を実施しました。
- 本研究により、南アルプスの大地の動きを観測する体制整備に向けて第一歩を踏み出せたので、今後も継続して体制整備を確実なものにしたく考えています。
成果発表するシンポジウム
南アルプスユネスコエコパーク登録10周年記念「南アルプスの人々の暮らしと自然を次の世代に」
日時|2025年3月8日(土曜日)、9日(日曜日)
場所|静岡県コンベンションアーツセンター「グランシップ」
南アルプス学会研究助成者報告会(ポスター発表コアタイム|3月9日(日曜日)11時40分から12時30分まで)で発表する
日時|2025年3月8日(土曜日)、9日(日曜日)
場所|静岡県コンベンションアーツセンター「グランシップ」
南アルプス学会研究助成者報告会(ポスター発表コアタイム|3月9日(日曜日)11時40分から12時30分まで)で発表する
成果発表のタイトル
「静岡県北部の地殻活動と湧水から南アルプスを把握するプロジェクト」
著者|静岡県立大学 グローバル地域センター 自然災害研究部門 特任教授 楠城一嘉
(共同研究者) 東京大学 大学院情報学環?学際情報学府 教授 酒井慎一
著者|静岡県立大学 グローバル地域センター 自然災害研究部門 特任教授 楠城一嘉
(共同研究者) 東京大学 大学院情報学環?学際情報学府 教授 酒井慎一
関連リンク
◎南アルプス学会
https://www.pref.shizuoka.jp/kurashikankyo/shizenkankyo/1050519.html
◎静岡県立大学グローバル地域センター
https://www.global-center.jp
◎静岡県立大学グローバル地域センター自然災害研究部門
https://shizuoka-earth.org
◎東京大学
https://www.u-tokyo.ac.jp/
https://www.pref.shizuoka.jp/kurashikankyo/shizenkankyo/1050519.html
◎静岡県立大学グローバル地域センター
https://www.global-center.jp
◎静岡県立大学グローバル地域センター自然災害研究部門
https://shizuoka-earth.org
◎東京大学
https://www.u-tokyo.ac.jp/
謝辞
本研究は東京大学地震研究所共同利用(2024-M-04, 2024-M-05)、南アルプス学会、Yahoo!基金2023年度防災減災活動支援助成プログラム、十山株式会社から支援を受けました。ここに記して謝意を表します。
参考
図1
上パネル: 地震観測点を設置し地震観測を開始。
下パネル: 2024年9月5-20日に38回地震を観測し、気象庁の観測回数の2倍であった。これは、これまで考えられていたよりも頻繁に地震が起きていることを示す。
下パネル: 2024年9月5-20日に38回地震を観測し、気象庁の観測回数の2倍であった。これは、これまで考えられていたよりも頻繁に地震が起きていることを示す。
図2
左表および左図: 衛星「だいち2号」の観測データを用いて干渉解析を行った。
右図: 2019年11月22日と2021年11月19日に衛星が北行へ進行(北行軌道)している時に観測したデータに基づき、地滑りと考えられる地表変動のあった箇所を抽出し印をつけた。
右図: 2019年11月22日と2021年11月19日に衛星が北行へ進行(北行軌道)している時に観測したデータに基づき、地滑りと考えられる地表変動のあった箇所を抽出し印をつけた。
資料
お問い合わせ
〒420-0839 静岡県静岡市葵区鷹匠3-6-1 もくせい会館2階
静岡県立大学グローバル地域センター 特任教授 楠城一嘉
電話: 054-245-5600
E-mail: nanjo(ここに@を入れる)u-shizuoka-ken.ac.jp
静岡県立大学グローバル地域センター 特任教授 楠城一嘉
電話: 054-245-5600
E-mail: nanjo(ここに@を入れる)u-shizuoka-ken.ac.jp
(2025年3月5日)